大竹のオリジナル曲です。コントラバスでしか表すことのできない音楽・世界観といったようなもの、いわばベース・ミュージックといったものを目指しました。作曲当初、大竹の好きなEnrico PieranunziやStefano Di Battistaのようなイタリア・ジャズ的なものをイメージしていましたが、気付くと「障子にほのかに浮かぶ蝋燭の灯」、「庭の池に浮かぶおぼろ月」など光と影のコントラスト、といったいわゆる「日本的な情緒」、谷崎潤一郎が唱えた「陰翳礼讃」的な表現に無意識のうちに向かっていました。
大竹のアルコによる淡々としたリフに、秋山によるハーモニーが色彩と陰影を与える。コントラバスとギターという2つの弦楽器を中心に展開する音世界は、「ほのかな光の日本家屋内に広がる静かな雨音」を想起させることから、タイトルを「thin rain」(淡々と降り続く絹糸のような細い雨)としました。
大竹は子供の頃から雨の日は家の中に籠って、軒を叩くポツポツポツという雨音をじーっと聴くのが好きだった。対照的に、尚美は雨が降ると外に出掛けたくなるのだそうだ。
月夜に照らされている池に雲がかかり、雨がポツポツと降り出す。
その雨が池の表面に無数の波紋を作っていく。
地面から雨の匂いが立ちのぼる。
やがて雨が上がり、月夜が戻って来る…
大きな風車のように、天候がぐるぐると回るイメージが浮かんできます。(大竹)